恭弥さんの日記

徒然なるままに好きなことを綴っていく

婚約者は私の妹に恋をする。

あらすじ

 伯爵家に生まれたイリアは5歳の時に、侯爵家嫡男のソレイルと婚約する。初めての顔合わせの日、イリアはソレイルに一目惚れした。それからはソレイルに釣り合う女性になるために努力するが、彼は自分に興味を持っていない。それどころかイリアの妹であるシルビアに恋をしている。

 ある日イリアは婚約者と妹を紹介するお茶会の場で、既視感に襲われる。イリアはああまただ、と思う。かつての人生でも、ソレイルはシルビアに恋をしていたのだ。イリアはただそれを見ていることしかできなかった。そしてそんなイリアは何の因果か、同じ時を巡る人間だった。

 

 珍しくなろう小説を読んだ。タイトルに惹かれて読み始めたけれど、筆力があってとにかく夢中で読んでしまった。すごい。ぐいぐい引き込まれるし、とにかく読ませてくる。終始主人公がずっと陰鬱で、だけど展開が気になる。しかし評価が分かれそうだなとも思う。だって主人公の悲惨さがつらいから。

 物語は何故か死んでも回帰してしまうイリアが、悲惨な最期を遂げるまでを何回と描いている。何度回帰しても、イリアは全く幸福な人生を歩めない。それどころか毎回地獄だ。その地獄はいつも、婚約者と妹が出会うところから始まる。そうして記憶を取り戻すイリアは婚約者の心を得ることを諦め、己の死を免れることと妹のシルビアを生かすことに尽力するようになる。あるときは妹のシルビアが死なないように先手を打ってシルビアを守り、またある時は学校へ通わせた。さらに別の人生では礼儀作法を教え、婚約者が自分を見ないならと出奔までして、シルビアと婚約者を結婚させた。それでも辿るのはいつだって凄惨な死で、そして家族や婚約者はイリアをいつだって見捨てるのだ。シルビア以外はイリアを心配もしない。もうこれは何をしたらクリアなのだろう。どうしたらイリアは報われるのか、救いはあるのか。そう思いながら読み続けた。とにかくつらい。救われてほしい。

 驚くことにイリアはずっと婚約者を好きなんだけれど、その婚約者は普通にクズ男とも取れる言動が目立つ。少女漫画の王子様にしては珍しいかもしれない。魅力のないキャラクターに、死んで生き返ってまた戻るという舞台装置。もしかしたら転生ものによく見る組み合わせなのかなとも思うけど、回帰しても悲惨な運命しか辿れないのはなかな見ないのではないか。そのせいか、どういう結末になるのか全く読めないのが面白いけれど。しかし読後感が最悪で、なろう上では未完。小説として完結するかどうかわからないのもつらい。カラスとイリアの心が通じて、そこまでは読んだけど、しかしその先がない。これは漫画でも読むべきだろうか。

 私的にはカラスではなく、一度でも初恋だという彼と結ばれて、幸福になってほしい気持ちがある。多分そんなラストなんて一生来ないかもしれないけれど。