恭弥さんの日記

徒然なるままに好きなことを綴っていく

宇宙のあいさつ/星新一

  • 宇宙のあいさつ

地球から派遣された宇宙船が保養地として見つけた惑星は、しかし住民に覇気がなかった。住民の寿命は200歳。知能は高く穏やかな気性で、地球でも使用人としてよく働くと好評。地球では大人気の惑星となった。

しかしある日、副船長は宇宙船をバラバラにすることのできる高度な機械を発見する。機械は惑星の住民の祖先が作ったもので、子孫である住民たちは使用方法もわかっているという。それなのになぜ、地球人が惑星を征服しに来た際にこの機械を使用しようとしなかったのか。

そこには恐ろしい事実が待ち受けていた。

 

  • 治療

人々を蝕み、世界中を覆いつくす劣等感。これらを何とか治すことはできないか。マール氏は劣等感を治す電子頭脳を作り始める。電子頭脳が苦心の末に完成すると幸福検定クラブを発足させ、人々はたちまち劣等感から救われていった。

すべての人から劣等感が無くなると、マール氏は満を持して電子頭脳の前に立つ。しかしマール氏はあらゆる人から取り残されてしまったことを知り、孤独感に苛まれたのだった。

 

  • ひとりじめ

俺は弟分の相棒と組んで悪事を働くが、その際に相棒は拳銃に撃たれ倒れてしまう。俺は相棒を置いて逃げることに。それから数日が経ち、街で青白い街灯の下に相棒が立っているのに気が付いた。相棒は弾丸を食らったが、林の中にある呪いの洞穴に逃げ込んで助かったのだという。そうなると分け前を与えねばならず、金が減ると考えた俺は相棒を車で引き殺してしまう。

そのまま帰宅するが、なんと相棒が家のドアを突き抜けてやってくるではないか。そして「俺たちはいつまでも相棒なんだろう」といったのだった。

 

女は都会で一人暮らしを始め、昼間は洋裁学校へ通っていた。それが終わってからは演劇の真似事や遊びに行くなどの充実した生活を送る日々。刺激が少し足りなくなってきたある日、寝る前につけたテレビから飾りのない部屋で芝居らしいことをしている女が映る。あたしならもっとやれる。

次の日、見知らぬ男にテレビに出る気はないかと声を掛けられ、スタジオに案内されるが、案内された場所は昨夜テレビ画面で見たのと同じ部屋。男は悪魔だと言い、ここはテレビの亡者を収容するための部屋だという。そして女は閉じ込められてしまった。

 

 

なんとなく手に取った星新一の「ショートショート」はタイトルの通り、宇宙に関する話が多く収録されている。特に上記で挙げた話は私的にも好きだなと思ったものだ。ちょっぴりホラー風味で大きなどんでん返しはないが、じわじわと怖いのだ。

私が生まれるより前に書かれている話だが、内容は現代人が抱える問題や本質を的確に突いていて、身につまされるというかハッとするようなシーンが多い。他人に絶対に見せたくない人々の心情の動きや状況を面白おかしく表現している。美しい言葉と奇抜なキーワード、星新一の盛り込む毒ともいえるユーモア。緩い挿絵と相まって、とてもわくわくする。

 

タイトルにある宇宙のあいさつの「挨拶」は、文字通りおはようとかこんばんわという意味もあるが、「相手の非礼な言葉や態度を皮肉る」という意味もある。恐らくタイトルは後者の「相手の非礼な言葉や態度を皮肉る」だろうなと読了後に思ったりなどしました。

ほかの話にもちょくちょくあるのですが、欲張りはいけないですね。