恭弥さんの日記

徒然なるままに好きなことを綴っていく

桜は秒速5センチメートルで落ちてくる


秒速五センチメートル 監督:新海誠

「桜は秒速五センチメートルで落ちてくる。」

初見の感想はえもい。ただ一言。えもい。これが本来の新海誠なんだ、と思ったことは間違いない。
初恋を拗らせる話だったので感想としては「恋をするとこうだよな」とか
とにかく映像綺麗だな~って感じで楽しく見終われると思っていた。
いや最初はそんな感じだったんだけれど。。。
なぜか深読みして考察してしまった今、彼は、新海誠は、一体どういうつもりでこんな話を作り公開したのだろうかと疑問を抱かざるを得ない。

ちなみにこれを一緒に見た恋人は、いい話だった~とニコニコしていた。
私も初めはにこにこしていたが、一人で2回戦目を迎えたらだめだった。
改めてじっくり見て、考察してしまったら最後。ただただ恐ろしい。

もう何が怖いって、秒速5センチメートル
「美しい初恋の思い出を引きずるため、現実の世界をうまく生きられない男の物語」じゃなくって、
「初恋をきっかけに、現実ではあり得ないものを体感してしまったために、現実ではないどこかに一人で閉じ込められた男の物語」
という風に私の眼には見えてしまったことだ。

「初恋」はただの象徴とか装置とか、そいういった類のものなのだ。
その装置を使って「簡単に現実とは違う場所に落ちてしまう恐ろしさ」の物語を作り上げている。

落ちるきっかけや原因はわからない。わからないが、理不尽に落ちてしまった。
そしてそれは一見すると、とても美しかったり大切に思えたりするものだ。
だから気づいたときにはもう助からない。
周囲は重大さにまったく気づいてくれない怖さを描いている。自分に置き換えるとぞっとしてしまう。

主題歌となっている「One more time, One more chance/山崎まさよし
全体的に美しく優しい歌。個人的にこの曲は耳に気持ちがいいと思う。
その中のワンフレーズ。「命が繰り返すならば、何度も君の下へ」
この話と重ね合わせると、
「何度でも同じ命を繰り返して、永久に君に出会うための孤独な旅を続けなければならない」
という意味かしら、と想像して孤独で、恐ろしい話だと感じた。